ジェンダー平等について考えたりしてみる

東京五輪・パラ組織委員会会長の人事を巡る一連の騒動をきっかけに、ジェンダー平等について色々考えるところがあったので、忘れる前に備忘録代わりに書き留めてみる。

ジェンダーに限らず、世の中の平等を目指す動きは、やりたいこと、やれることがあるのに、本人にはどうしようもない理由でその機会を奪われる理不尽を解消すること、それによって人々の幸福度を上げていくことに、そもそもの狙いがあるものと考える。

あるパラメータだけを切り取って平等平等と叫ぶことで、他の平等が犠牲になったり、窮屈で生き辛い世の中になっては本末転倒のおそれもあろう。


2019年12月公表のジェンダーギャップ指数2020で特に日本の成績が悪かった経済分野の課題は、待遇、処遇面での不平等である。この問題を解決し、かつ皆が幸せになれる究極の処方箋は、性別に関わらず、(求められる)能力を持つ人材を適材適所に配置し、その職務に応じた正当な対価をきちんと支払うことであり、クオータ制などという帳尻合わせでは本質的な解決には至らないと考えるのだがどうだろうか。

また、ここで言う「能力」には、業務遂行に直接的に関わるスキルだけでなく、コミュニケーション能力や、人にやる気を出させたり、場を明るくしたりする間接的な能力も含まれて然るべきだろう。そしてその中のひとつの要素として、性差による特色、例えば女性ならではのセンスのよさであるとか、男性ならではの体力であるとか、そういうものも入っていいんじゃないかと思う。

これは例えば貿易に置き換えたらわかりやすいが、工業国であるA国と農業国であるB国が、工業製品と農産物を交易するイメージに近い。

この状況での平等とは、適正な価格や条件で通商を行うことである。不平等とは、相手の不利や無知をいいことに安い値で買い叩いたり、不当な関税をかけたりすることである。異なった産物や付加価値を持つ国や部族同士が正当な条件でそれらを取引することを不平等とは言えまい。

男女の差だって突き詰めれば同じことで、それぞれに特色があり、得手不得手もある。無論、男はこうあるべきとか、女のくせにとか言ってるわけではなくて、持って生まれた特長を活かして何が悪いという話である。性別由来の強みであっても、自分の戦闘ツールのひとつとして取り入れ、総合的な付加価値を形成していけばいい。そして組織の側は、そこを踏まえた上で、求められる職務に応じた能力を持つ人を、性別によらずフラットにアサインし、正当な待遇で処遇せよ、ということである。

これがなかなか出来ない背景の仮説として、日本の大多数の企業が、表向き成果主義を標榜しながら、本質はメンバーシップ型雇用を踏襲し、ジョブ型雇用になかなか移行しきれていない事情があると踏んでいるのだが、この話はややこしくなるのでまた次の機会に譲りたい。

上にも挙げたジェンダーギャップ指数(GGGI)という指標では、日本の順位は153ヵ国中121位(2019年12月発表時)とひどい順位で、これが、日本は遅れてると散々に言われる一因になっているわけだが、この中身をつぶさに見ていくとあれっ?と思わざるを得ない部分があるのに気がつく。前にも例を挙げた、分野別にはトップクラスのものもあるのに、全体の成績がかなり悪く集計されてしまうとか、そもそも国の人口構成そのものに偏りがあるのにそこが考慮されないとか、男性側の不平等が数字に出てこない点とか、各パラメータの点数の配分の問題とか、それこそ挙げ出したらキリがない。

それに世の中には、ジェンダーギャップ指数(GGGI)以外にも男女平等をはかる指数はいくつかある。それぞれの指標と日本の順位は以下のとおりである。
(出典:内閣府男女共同参画局発表の最新データ)

HDI(人間開発指数)19位/189か国
GDI(ジェンダー開発指数)51位/166か国
GII(ジェンダー不平等指数)23位/162か国
BIGI(男女不平等基本指数)80位/134か国

どれも、ジェンダーギャップ指数(GGGI)よりはましな成績に見えないだろうか。もちろんこれらの指数はどれがよくてどれが悪いと言う単純な話ではなくて、それぞれ狙いどころと設計が違うだけなので、目的や切り口に応じて最適なモノサシを選べばいいということである。

中身も把握しないまま何位だ何位だと大騒ぎする必要はないし、それが本質的な問題解決に結びつくとは考えにくい。

ちなみにBIGI (男女不平等基本指数)で日本の順位が80位と低めなのは、女性よりも男性が若干不利となっているせいで、女性の健康寿命が長いのが効いているらしい。こう言う男女双方からの視点も大事だろう。


以上、取り止めもなく書き綴ってしまったが、このテーマは世の中の流れとしてだけでなく、人間や民族の普遍的な価値観に関わる重要な論点だと思う。皆さんのご意見も広く聞かせてもらいたいので、今後の百式会でも是非取り上げてみたい。


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